退去強制手続きと在留特別許可|流れ・口頭審理・最新改正ポイント
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1.退去強制手続きの全体像と在留特別許可
1.退去強制手続きの全体像
退去強制手続きとは、入管法第24条に規定する退去強制事由に該当する外国人を、法に基づき強制送還するための手続です。一方、在留特別許可は、退去強制に該当する場合であっても、個別事情を総合考慮し、法務大臣の裁量により本邦在留を例外的に認める制度です。
退去強制手続は、原則として以下のような流れで進むこととなります。

2.2024年統計:退去強制手続の受理及び処理人員(入管庁公表)
2024年度版・地方出入国在留管理局管内別 退去強制手続の受理及び処理人員(公表2025年7月18日)から、2024年の退去強制手続きと在留特別許可傾向を抜粋します。
入管庁の公表データ(2024年)に基づき、退去強制手続き各段階の件数と構成比を整理しました。制度全体では在留特別許可は少数ですが、異議申出段階では在留特別許可率が大きく上がる実態が数値に表れています。
| 区分 | 件数 | メモ |
|---|---|---|
| 受理 | 30,412 | 旧受 4,312/新受 24,419/他から移管 1,681 |
| 既済 | 25,679 | 引渡し 8,197/引継ぎ(監理措置) 580/引継ぎ(出国命令手続) 10,131/ 終局処分 3,066(容疑なし 47・容疑不十分 173・日本国籍等 50・重複 1,685・併合 837・出国済 210・その他 64) |
| 中止処分 | 2,042 | |
| 他に移管 | 1,663 | |
| 未済 | 4,733 |
| 結果 | 件数 | 構成比 |
|---|---|---|
| 口頭審理へ | 1,196 | 6.33% |
| 退去強制令書発付 | 6,807 | 36.00% |
| 出国命令交付 | 10,382 | 54.91% |
| 在留特別許可 | 364 | 1.93% |
| 非該当 | 1 | 0.01% |
| 差戻し/他移管/中止/終止/その他 | 158 | 0.84% |
| 結果 | 件数 | 構成比 |
|---|---|---|
| 異議申出へ | 978 | 82.25% |
| 退令発付 | 59 | 4.96% |
| 取下げによる退令発付 | 60 | 5.05% |
| 在留特別許可 | 37 | 3.11% |
| 他移管/中止/終止/その他 | 55 | 4.63% |
| 結果 | 件数 | 構成比 |
|---|---|---|
| 在留特別許可 | 588 | 41.91% |
| 退令発付 | 610 | 43.48% |
| 取下げによる退令発付 | 82 | 5.84% |
| 他移管/中止/終止/その他 | 123 | 8.01% |
| 区分 | 件数 | メモ |
|---|---|---|
| 受理 | 2,062 | 新受 2,048/他から移管 14(旧受 0) |
出典:出入国在留管理庁 公表資料(2024年(令和6年))「違反調査・違反審査・口頭審理・異議申出・在留特別許可申請の件数」。
本ページの比率は、上記「既済」件数を母数として作成(小数点第3位を四捨五入)。
参考:監理措置 580件、出国命令手続への引継ぎ 10,131件(いずれも違反調査「既済」内訳)。
2.退去強制手続きの流れ(5ステップ)
退去強制手続きは、①違反調査 → ②収容(又は監理措置) → ③違反審査 → ④口頭審理 → ⑤法務大臣の裁決という順で進みます。 令和5年改正の施行により、収容に代わる「監理措置」や送還停止効の例外などの新ルールが導入されています。
1. 入国警備官の違反調査
第一段階は、入国警備官による違反調査です。通報・自首・職務質問・他機関からの移管などを端緒に、入国・上陸・在留に関する違反事実の有無を確認します(入管法28条)。
調査は任意調査(出頭依頼・資料提出等)が原則ですが、必要に応じて収容令書に基づく身柄収容等の強制的措置が採られることがあります。
- 端緒例:第三者通報/本人申告/現認/他庁からの送致・移管
- 典型的な収束先:引渡し(身柄の引渡し)/出国命令手続へ引継ぎ/監理措置への引継ぎ/終局処分(容疑なし等)
【最新ポイント】近年は、案件の内容や本人の協力状況に応じて、任意出頭の活用や監理措置(後述)への移行が見られます。
2. 身柄の収容(又は 監理措置)
違反調査で退去強制事由に該当する相当の理由があると認められると、入国警備官は収容令書により身柄を収容できます(原則30日、やむを得ない事由があれば最長60日)。
もっとも、すべての事案が収容されるわけではありません。令和5年改正の施行により、収容に代えて監理措置(出頭義務・居住地届・支援者の監督等の条件を課す運用)が導入され、個別事情に応じた身柄管理が選択されます。
- 収容期間の目安:原則30日以内(最大60日)。個別の事情・手続進行により短縮・解放の可能性あり。
- 監理措置:遵守事項に違反した場合は収容へ切替え等のリスクあり。支援者の体制・生活実態の資料整備が重要。
【よくある誤解】「必ず収容される」わけではありません。任意出頭で調査が進む事例や、監理措置が許容される事例もあります。
3. 入国審査官による違反審査
身柄・記録が引き渡されると、入国審査官が退去強制事由該当性を審査します。非該当なら放免。 該当と認定する場合は、出国命令制度の対象性(該当すればより簡易な自発的出国の制度)も検討されます。
あわせて、本人には口頭審理の請求権が告知されます(請求しない場合は、速やかに退去強制令書が発付され得ます)。
- 通知を受けた日から3日以内に口頭審理を請求可(請求しない・放棄書に署名すると直ちに次段階の処分へ)。
- 【参考:直近実績の一例】審査段階の既済内訳では、出国命令交付が最多、次いで退去強制令書発付。在留特別許可は少数に留まります。
4. 口頭審理(特別審理官)
口頭審理は異議申立て前の再確認手続で、前段階の認定(退去強制事由該当)に誤りがないかを検証します。
結果に不服があれば、通知を受けた日から3日以内に法務大臣へ異議申出が可能です。
なお、難民認定手続中であっても、濫用的な繰り返し申請等の一定の場合には送還停止効が適用されない例外が設けられています(改正法の運用)。
5. 法務大臣の裁決(異議申出段階)
法務大臣は、手続違反・法令適用の誤り・事実誤認・著しい不当などの主張・資料を踏まえて裁決します。 裁決の結果は、退去強制令書発付又は在留特別許可のいずれかです。
この最終段階では、家族・子の利益、地域定着、素行・納税・保険加入、生活基盤などの事情資料が総合考慮されます。
- 異議申出では、不服の理由を示す資料(就労・就学・家族関係・扶養・健康・コミュニティ活動等)の整備が鍵。
- 近年の運用ガイドラインでは、子の利益の保護や地域社会との関係に重点が置かれています。
在留特別許可になり得る典型例(総合考慮要素)
② 人身取引被害者などの人権上の配慮を要する事案
③ 日本人配偶者や未成年の子の養育・学業、長期在留による地域定着、扶養・介護等の家族・子の利益
④ 素行善良、納税・公的保険加入の適正、安定的な生計、支援者の監督体制 ほか
⑤ その他、法務大臣が特に在留を許可すべき事情があると認める場合
在留特別許可は裁量であり、ポイントは一つではなく総合評価です。段階ごとの主張設計(審査 → 口頭審理 → 異議申出)と、証拠資料の一貫性・充実が結果を左右します。
3.退去強制手続きと在留特別許可に関する最新の改正ポイント
令和5年改正入管法の施行を受け、退去強制手続きや難民認定手続きにおける実務運用には大きな変化が生じています。 ここでは特に影響の大きい主なポイントを整理します。
1.送還停止効の例外規定(令和5年改正)
従来は難民申請中は原則として送還が停止されていましたが、 繰り返し申請など濫用的なケースでは、 難民認定手続中であっても送還が可能となりました。 これにより、不法滞在状態の長期化を防ぐ政策的意図が示されています。
2.監理措置の導入
収容に代わる新制度として、出頭義務・居所届出義務・支援者の監督など 一定の条件を課したうえで、収容せず手続を進めることが可能になりました。
支援者の体制や生活基盤が評価対象となり、家族と生活を維持したまま手続を進められる道が広がっています。
3.出国命令制度の運用見直し
自発的に出国する意向がある不法残留者に対し、 退去強制と比べて再入国制限が短くなる制度です。
近年は制度運用が整理され、迅速な手続で社会的影響を少なくする出口戦略 として活用が進んでいます。
4.在留特別許可ガイドラインの見直し(運用更新)
退去強制事由に該当しても、子どもの利益の保護や 地域社会との強い関係性などがあれば、 在留特別許可が認められる可能性があります。
近時の運用では、家族の実態・人道上の配慮をより重視する傾向が顕著です。
※制度改正の影響は案件ごとに異なります。最新の審査傾向や証拠資料の整備方法は、専門家にご相談ください。
4.退去強制手続きと在留特別許可Q&A
Q1. 退去強制手続きが始まっても、自宅から通いながら手続きを進めることはできますか?
はい、可能です。 違反調査の段階から必ず収容されるわけではなく、任意出頭で手続きが進む例もあります。 また令和5年改正で導入された「監理措置」により、出頭義務・居所届出・支援者による監督などの条件を守ることを前提に、 身柄を収容せずに手続きを進められる制度が整備されています。 ただし、監理措置が許可されるかは 個別の状況(家族関係・居住・収入等) により判断され
Q2. 在留特別許可は誰でも申し込めるのですか?
在留特別許可は、法律上 申請権が明記された制度ではなく、 法務大臣が個別状況を総合的に考慮して判断する「裁量制度」です。 実務上は、 異議申出段階や監理措置・仮放免中に事情を聞いたうえで判断されることが多いです。 ご本人の状況(家族の生活、子どもの利益、日本とのつながり、素行、納税など)が どの程度整っているか 資料により丁寧に立証することが重要です。
Q3. 退去強制令書が出された後でも、在留を認めてもらえることはありますか?
はい、状況によっては可能です。 一度退去強制令書が発付されても、 「異議申出」→法務大臣の裁決 という最終段階で事情が総合考慮され、 在留特別許可が認められることがあります。 特に、日本人の配偶者や就学する子どもの利益が強く影響するケースでは、 最後まで内容を再整理し資料を提出することが、結果につながることがあります。
Q4. 難民申請をすれば送還を止めることができますか?
必ずしも止まりません。 以前は、難民申請中は自動的に送還停止がかかる運用でしたが、 令和5年改正により、 濫用的な繰り返し申請の場合などに例外的に送還が可能 となりました。 正当な理由に基づく難民申請であれば慎重に審査されますが、 安易な申請はかえって手続を不利に進めてしまう可能性がありますので注意が必要です。
Q5.子どもが日本で学校に通っている場合、在留特別許可は認められやすいですか?
審査において「子の利益」は非常に重要な要素とされています。
特に、
・日本で出生または長期間在住している
・日本語教育が中心で、生活環境が日本にある
・保護者の扶養により安定した生活が成り立っている
といった事情は、強く考慮される傾向があります。
ただし、それだけで自動的に許可となるわけではなく、 家族全体の生活実態と将来設計を丁寧に示すことが必要となります。
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