
入国拒否期間と上陸特別許可
日本国内で退去強制手続にともなう在留特別許可を希望したにも関わらず、許可されなかった場合には退去強制令書に基づき本国などへ送還されることになります。このようなケースでは「日本人の配偶者等」や「家族滞在」、「永住者の配偶者等」などの在留資格認定証明書の交付申請を行うことになりますが、そこで問題となるのが日本への入国拒否期間です。退去強制された外国人は、原則としてその後5年間(ケースによっては10年間)は入国拒否期間に該当するため、日本へ入国をすることはできません。
入管法第5条では日本への上陸許可の消極要件を定め、上陸を禁止するべき外国人を事由別の列挙しています。
第五条 次の各号のいずれかに該当する外国人は、本邦に上陸することができない。
ロ 第二十四条各号(第四号オからヨまで及び第四号の三を除く。)のいずれかに該当して本邦からの退去を強制された者で、その退去の日前に本邦からの退去を強制されたこと及び第五十五条の三第一項の規定による出国命令により出国したことのないもの 退去した日から五年
ハ 第二十四条各号(第四号オからヨまで及び第四号の三を除く。)のいずれかに該当して本邦からの退去を強制された者(ロに掲げる者を除く。)退去した日から十年
ニ 第五十五条の三第一項の規定による出国命令により出国した者 出国した日から一年
ロ 公共の施設を不法に損傷し、又は破壊することを勧奨する政党その他の団体
ハ 工場事業場における安全保持の施設の正常な維持又は運行を停廃し、又は妨げるような争議行為を勧奨する政党その他の団体
中でも九のイ〜ニまでに不法滞在等に関する入国拒否期間が明確に規定されており、退去強制された者が過去に退去強制されたり、出国命令を受けて出国したことが無い場合には上陸拒否期間は5年間となります。一方、過去に退去強制を受けたり出国命令を受けて出国したことのある者の上陸拒否期間は10年間となります。ただし、平成16年度に新設された出国命令制度を利用して出国した者の上陸拒否期間は1年間となります。
国際結婚を伴う在留特別許可を希望した多くのケースでは日本人との婚姻が既に成立しており、上陸拒否期間が適用される間は、結果として家族や夫婦が2国間に別れて生活することになってしまいます。万が一にも、日本での在留特別許可が許可されずに退去強制となると、このように家族にとっては非常につらい状況となってしまうのが現実です。
しかも、在留資格認定証明書を発行するかどうかは入国拒否期間とは全く別の問題であるため、仮に退去強制された時から入国拒否期間である5年(または10年)が経過したとしても、必ずしも在留資格認定証明書が交付されるとは限りません。そのうえ、申請を行えば過去に退去強制された事実は必ず明らかになるので、入国管理局の審査も慎重となるケースが多く、特に氏名やパスポートの偽装による不法入国や偽名での婚姻手続きなど、過去に日本での滞在中に法令違反がある場合には、在留資格認定証明書の取得は非常に困難となります。
このようなケースでは、退去強制後にどのような形で夫婦としての実態が継続されていたかがポイントとなると思われます。退去強制後にお互いの交流が全く認められないケースなどでは、そもそも日本滞在時から夫婦としての実態があったのかが疑問視され難しい状況となるでしょう。また、日本人が定期的に配偶者の母国を訪れたり、生活費を毎月送金するなどの行為が認められれば在留資格取得の可能性は高まることが多いようですが、いずれにせよ過去の違反内容と今回の入国目的を慎重に比較検討した上で審査されことになります。その点においては、配偶者との間に日本国籍の子が出生している場合についても同様であり、過去の入管法違反の度合いによっては何度申請を行っても不交付と言う結果になることもあり得ます。
このように在留特別許可が得られずに退去強制となった場合には、再び家族が日本で生活をするために多大な努力が必要となりますが、法務大臣が特別に事情を認めた場合には、入国拒否期間などの上陸拒否事由に該当していても特例として在留資格認定証明書が交付されるなどして、上陸特別許可として日本への入国が可能となるケースがあります。これは入管法第十ニ条の三に記載があります。
第十二条 法務大臣は、前条第三項の裁決に当たつて、異議の申出が理由がないと認める場合でも、当該外国人が次の各号のいずれかに該当するときは、その者の上陸を特別に許可することができる。
二 人身取引等により他人の支配下に置かれて本邦に入つたものであるとき。
三 その他法務大臣が特別に上陸を許可すべき事情があると認めるとき。
2 前項の許可は、前条第四項の適用については、異議の申出が理由がある旨の裁決とみなす。
これは外国人が上陸拒否事由に該当する場合でも、その事由が重大なものでなく、法務大臣が上陸を特別に許可すべき事情があると認める場合を指します。ただし、この上陸特別許可も在留特別許可と同様に法務大臣の自由裁量とされており、希望をすれば必ずもらえるものではありません。上陸特別許可の明確な判定基準などは明らかにされておらず、上陸を許可すべき事情の有無についても法務大臣の裁量にゆだねられています。
ただし、上陸拒否の事由が重大なものではなく、日本国籍の配偶者や子が日本にいる場合などに許可されるケースが多いようです。このようなケースでは、退去強制後に2国間に別れた夫婦などが、渡航歴、金銭のやり取り、生活状況などを含めてどのような交流をしていたかが重要になると思われます。不法滞在に関する基礎知識
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